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2017年4月14日金曜日

ネスレ日本・高岡社長の著書を2冊イッキ読みしてみた。

前回のブログでネスレ・高岡社長の著書『ネスレの稼ぐ仕組み』の書評を
書きましたが、随所に金言が散りばめられていたのと、単純に面白くスイスイ
読めたので、一度「高岡ワールド」にどっぷり浸かってみることにしました。


今回も「図書館カウンター」で借りました。


まずはおちまさとさんとの共著書『逆算力』

祖父・父ともに42歳で亡くなっていることから、自分も42歳になったら死んで
しまうのだと、父の葬儀の喪主を務めた10歳の時から思っていたという高岡氏。
そのため、42歳から逆算して人よりも凝縮した人生を送ろうと決意。

ネスレ日本に入社し、若かりし頃から営業マンとして圧倒的な成果を上げ、
最年少の30歳で部長に昇進。その後も出世を続け、ついにグローバル企業
ネスレで史上初・日本人として社長に就任する。

と書いてしまうと、優秀なサラリーマンの順風満帆なサクセスストーリーに
しか見えないですが、、やはりこの本からもたくさんの学びがありました。
章ごとに教訓的な「高岡節」が綴られているスタイルなので、その一端を抜粋します。

死ぬ時が来ることを真剣に考えれば、
若い人だって人生の決断をする。
この章では若者のリーダーシップの欠如を招いた日本の教育について言及しています。
高岡さんは、『自分で自分の寿命を決めれば、そこから逆算して自分の人生を切り開いて
いくことができる。』と述べています。

私の父は幸いにも元気で、先日古希を迎えました。
祖父は、私が中学生の時に80歳で亡くなっています。

人生80年。よく言われる言葉ですが、自分があと2年弱で折り返し地点を
迎える事実と向き合い、そこから逆算してどのように人生を描いていくべきか、
真剣に考えなければいけないことに気づかせてもらいました。

お茶くみであっても最高を目指す。小さい仕事でも
目標を決めることが、大きな仕事に結びつく。
最初に配属された営業所で当時最年少だった高岡氏は、「高岡が入れたコーヒーが
一番おいしい」と言われることを目標にどうすればいいか考えた結果、上司や先輩
たちのコーヒーのミルクや砂糖の好みを全部覚えたそうです。

この話を読んで、サッカー日本代表の長友さんが、大学時代にサッカー部で怪我を
して試合に出られずスタンドから応援していた際、独創的なリズムで太鼓を叩いて
他大学の学生たちの間で話題になった、という話を思い出しました。
(詳細はこちらのまとめ記事をご覧ください。)

一流の人は小さな仕事でも手を抜かず、自分のできる全力を尽くす。
その姿勢が大きな成果に結びついていく。

つい手を抜いてしまいがちな時に、この言葉を思い出して実践していきたいと思います。

自分の意見を出すと敵は増える。でも、正論を唱え、
信念を貫けば敵もいずれは味方になる。
メーカー側が返品に応じるのが当然の慣習だった食品業界のルールを破り、
あえて取引先に根回しをせずに、メディアに対して「返品ゼロ」を宣言した高岡氏。
こうしたやり方もリーダーシップの一つである、と述べています。

有名な電通『鬼十則』には、

摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、
でないと君は卑屈未練になる。

という言葉が書かれています。

どちらも「自分の意見を出し、周囲との摩擦を恐れず信念を貫くべし」という
本質は同じことを言っていると思うのですが、ハッキリ言ってとても苦手領域です。。。
嫌われないよう、周りを気にして迎合してしまう悪癖がしょっちゅう顔を覗かせます。。

だからこそ、本に散りばめられているこれらの「高岡節」が深く刺さるのだろうと
自己分析しているので、今後は勇気を持って、摩擦を恐れず自分を出していくように
しよう、と心に誓いました(皆さまと建設的な議論ができる自分、を目指します)


2冊めは『ゲームのルールを変えろ』です。


トップダウンの命令に文句を言わず、従順で勤勉に働く人間を寄せ集めた旧態依然の
「ニッポン株式会社モデル」が日本人リーダーの輩出を妨げている原因であると断罪し、世界有数のグローバル企業・ネスレで日本人として初の社長に就任した高岡氏が自らの
考えや主張を「やって見せる」ことで部下の成長を促し、自ら歩んできた人生・キャリアを通じて身につけた「変革を起こすリーダーを育てる方法論」が綴られています。

これまで読んできた『ネスレの稼ぐ仕組み』『逆算力』にも書かれていた内容と
重なるところも多分にあるのですが、この本が一番まとまっていると感じました。
以前本ブログでご紹介した一般社団法人ソーシャルシフト・ラボ 代表理事・斉藤徹
さんの著書『再起動(リブート)』のように、高岡さんのリアルを通り越した生々しい
人生の一端を垣間見ることができて、電車で読んでいたら思わずいつも降りている
勤務先の最寄り駅を乗り過ごしそうになるくらい引き込まれていました。

ここから、本書にもたびたび登場する「CSV」について書きたいと思います。
聞き慣れない方も多いかと思いますが、日本語に訳すと『共通価値の創造』と
なります。(「共有価値」と書かれているケースもあります。また古来から日本に
伝わる有名な「近江商人の三方[社会・生活者・企業]良し」に例えられることも
あります。)ハーバード大学の教授、マイケル・E・ポーターにより、それまでの
「CSR(企業の社会的責任)」に代わる新しい概念として提唱されたコンセプトです。
詳しく知りたい方は、よろしければこちらのリンクをご参照ください。

本書の中で高岡氏は、前出の「返品ゼロ」の取り組みについて立派なCSVである、
と述べています。会社として利益を増やしていることはもちろん、丹精込めて作った
商品(ネスレの場合はキットカットなどの食品)を生活者にロスなく届けることが、
世界から飢餓をなくす動きにつながっていく(例として、東日本大震災が起こった
直後、キットカットの売上の一部を被災地の寄付に回した活動を挙げていました)
といった考えに基づいています。

またネスレは、「ネスカフェアンバサダー」という取り組みも行っています。
TVCMも流れているのでご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、
アンバサダーと呼ばれる代表者がネスレにコーヒーマシンの貸出を申し込むと、
オフィスにマシンが無償で届けられる(※コーヒーカートリッジはアンバサダーが
自腹で立替)。社員は1杯20円程度のお金を支払いコーヒーを飲むことができる、
というビジネスモデルです。このケースの場合ですと、

ネスレ(企業)・・・カートリッジの売上が継続的に入る
生活者(アンバサダー・社員)・・・美味しいコーヒーが安価で飲める
社会・・・会話が生まれ、小さなコミュニティが形成される(孤立・孤独をなくす動き)

という『三方良し』が見事に成立しています。

『CSV(共通価値の創造)』を見事に実践しているネスレの事例を学んだので、
自分もぜひ今後の仕事で実践していきたい、いや実践します。


ネスレ・高岡社長の著書3冊を通じて、「高岡節」を胸に刻み込みました。

ゲームのルールを変え、リーダーとして稼ぐ仕組みを産み出すために、
人生を80年と定めて逆算し、今やるべき「記録に残すこと」を終えます。


2017年3月25日土曜日

すべてのビジネスパーソンが応用できる『ネスレの稼ぐ仕組み』。

最近よく利用している在庫のない図書館、
図書館カウンター」で借りました。ネット予約で、
区内の図書館に在庫があればここに取り寄せて
もうらことができ、入荷したらメールで連絡をもらえる仕組みです。


最近TVCMでも目にする「ネスカフェアンバサダー」や、
キットカット自体に住所を書いて郵便で送る「キットメール」など、
息の長いブランド戦略キャンペーンを行っていることは知っていたのですが、
ある時FBでこの本のことを投稿されている人がいたため、気になって
借りてみました。

この本の一節に、前回ブログで書いたこと に通じる内容が書かれていました。

パワーポイントでプレゼンテーションの資料を作成している時間は、
考える時間には入りません。営業で次の訪問先に移動するときでも考える
ことはできるはずです。考える時間を捻出できない人は、イノベーションを起こす
こともできなければ、稼ぐ仕組みをつくり出すこともできません。ただ黙々と、
作業をこなすだけの社員で終わってしまうのです。

これ以外にも、

消費者調査でわかるようなことは誰にでもできる。顧客が気づいていない問題を解決する
ことを真剣に考えていかなければならない。

といった、「高岡節」と言っても良いようなハッキリとした物言いで、
私にとっては心に響いた金言が随所に散りばめられています。

著者のネスレ日本・代表取締役社長の高岡氏は「おわりに」の冒頭で、

本書は、すべてのビジネスパーソンに読んでいただきたいと思って書きました。
なぜなら、どんな会社にいても、どんな部署にいても、どんな仕事をしていても、
誰もが稼ぐことに貢献できるからです。

と書かれています。読んでみてまさにこう感じたのですが、

サラリーマンである以上、例外なく「会社の利益獲得に貢献する」
ことはミッションであり、むしろその意識を持って働いている社員の数が
多ければ多いほどその会社は強い、と言えるのではないかと。


一朝一夕にイノベーションを起こすことは出来ない。
ただ資料をつくるだけでもできない。
稼ぐ仕組みをいかに考え抜くことができるか、に尽きる。

この本を通じて学んだ上記の考え方は、
広告やマーケティング業界に携わる方だけでなく、
すべてのビジネスパーソンが応用できるのではないかと
強い感銘を受けたので、もしまだ読まれていない方には
是非おすすめします。トータル200ページ弱で、あまり本を
読むのが早くない私でも2時間ちょっとで読むことができました。

2017年1月21日土曜日

えんとつ町のプペルにマーケティングを学んだ。

これから、マーケティングの話を書きます。


今までの職歴でいくと、僕は新卒から12年ちょっと、いわゆる
「総合広告代理店」とか、「エージェンシー」と呼ばれるいくつかの会社に
勤めてきました。そして今は、主にクルマ系のデジタル領域を扱う会社に
在籍しており、所属部署名には「マーケティング」という言葉も入っています。

だから何だ、という話ですが、、今まで比較的身近に接してきた「マーケティング」の
概念を覆すような出来事が起こったので、自分の中での整理も込めて
書いてみたくなった次第です。もしご興味があれば、少しお付き合いください。


「キングコング」というお笑いコンビの芸人として有名になり、今は絵本作家としても
活動している西野あきひろさんが、3日前にとんでもないことをやらかしました。
3ヶ月前に発売し、今まで23万部超を売り上げている自身の作品、
『えんとつ町のプペル』 全編を、何とネット上で無料公開したのです。


以下、無料公開に際して西野さんが書いたブログ「お金の奴隷解放宣言。」の抜粋です。


はたして全てのモノが『お金』を介さないといけないのでしょうか?
SNSで誰とでも繋がれるようになり、『国民総お隣さん時代』となりました。
ならば、お金など介さずとも、昔の田舎の集落のように、物々交換や
信用交換で回るモノがあってもおかしくないんじゃないか。
「ありがとう」という《恩》で回る人生があってもいいのではないか。

もしかすると、『本』には、その可能性があるのではないか?


その結果は、すぐに出ました。

以下、翌日更新された西野さんのブログです。


『えんとつ町のプペル』を無料公開したらAmazonランキングが1位になった。


僕は今まで西野さんの作品を読んだことはありませんでしたし、たびたび
メディアで取り上げられている様子を見ている限りだと、いわゆる「炎上狙い」で
アンチの人たちをわざと煽るようなことを書いている印象があり、
ひと言でいうとあまり良い感情を持っていませんでした。


でもこの一連の出来事を通じて、今までの印象が一気に変わりました。

西野さんは間違いなく先見の明を持った
超優秀なマーケッター なんだと。


今回西野さんが採った手法は、マーケティング用語で言うと
「フリーミアム」 という言葉が一番しっくりくると感じました。
まったく新しいやり方、という訳ではなく、実はかなり昔から使われています。

ビジネス書大賞2012の候補にもノミネートされた名著、
『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』 という本があります。

1965年に結成されたアメリカのロックバンド、グレイトフル・デッドは、
録音禁止が当たり前のライブ会場で、観客の録音を奨励するどころか、
なるべく高い音質で録音できるよう、専用の場所を用意していたという
くだりがこの本の中で紹介されています。

このケースでいうと、グレイトフル・デッドはライブに来てくれたファンに「音源」を
無料で提供し、持ち帰って家で聞いてもらうことでエンゲージメントを深め、
再びライブという「体験」にお金を払ってもらう、というサイクルを生み出しています。


今回西野さんは、


「作品の文章と画像という情報」を無料で提供した結果、
「絵本という物質」にお金を払ってもらうことに成功した。


と言えます。


西野さんは最新のブログで、


無料公開することによって、より多くの人に届くし、買わない人も増えるだろうけれど、
買ってくれる人も増えると思ったので。
そして、計上されるのは、買ってくれる人の数だ。クリエイターの生活を支えるのは、
買ってくれる人の数だ。知られないと買われない。

今回、絵本の情報を無料公開したことによって、Amazonや楽天の書籍総合ランキングが
1位になり、本屋さんでもたくさん買っていただいたそうだ。僕は、それが嬉しい。

当初から掲げている『えんとつ町のプペルを100万部売る!』という目標は、今も捨てていない。
ただ、無料で見たい人は、もう、お金なんて要らないからインターネットで無料で見ればいい、
と思っている。

と記しています。

西野さんは「この本を100万部売る」という目標を掲げ、それを達成するためにどうすれば
いいか熟慮した結果、まだ勢いのあるこのタイミングで無料公開に踏み切ったのです。

踏み切れた背景には、西野さんの行動を批判した人に対して宛てた以下文章

情報の無料化の波は、あなたには止められない。
もちろん僕にも、地球上の全クリエイターにも止めることはできない。

この感覚があったからだと思います。

一方でいくら感覚があったからといって、それだけで踏み切れるような簡単な決断では
まったくなかったと思います。特に日本では、漫画『ブラックジャックによろしく』が完結から
かなり経ってから著作権フリーにしたことで話題になった事例はありますが、まだまだ
売れているタイミング(『えんとつ町のプペル』は無料公開前もAmazonの絵本ランキングでは
1位だった)に全編を無料公開した本の存在を他に聞いたことがありません。また西野さん
自身がブログで紹介しているように、「クリエイターにお金が入らなくなる」「作品の価値を
下げる」といった世間の批判とも闘わなければなりません。


自分の皮膚感覚を信じ、批判を受けるのを覚悟の上で
果敢に前例のないチャレンジを行い、結果を出した。

これが、僕が西野さんのことを超優秀なマーケッターだと思った理由です。


僕は「三方良し(売り手よし・買い手よし・世間よし)」という言葉が大好きなのですが、
この西野さんの行動は、結果として

売り手:西野さん(作品がAmazon・楽天全書籍ランキング1位になった)
買い手:お客さん(無料【Web】でも有料【絵本】でも、好きなように作品を楽しむことができる)
世間:すべての「ネットユーザー」(無料で読めた感謝を、「シェア」という形で表現する)
    ※西野さんは自身のFacebookアカウントで、シェアに対する御礼を何度も投稿している。

理想的な三方よしの循環を生み出しています。

この三方良しができた最初のきっかけは、紛れもなく『ヒット作の全編無料公開』です。
西野さんはこの行動を指して自身のブログで「恩で回す」と表現していますが、同義で
恩送り」(英語だとペイフォワード)と言い換えることもできます。


まとめ:「情報無料化」の大波に逆らわず、まず恩を送る。





ここまで長文にお付き合い頂き、ありがとうございます。
今回本ブログの題材にさせてもらった西野あきひろさんの作品、
『えんとつ町のプペル』全編無料公開ページはこちらです。